付録3 公契約条例に関する考察

 「必要生計費」の活用として、行政などがとり行う公契約の考え方に組み入れる必要性について考察する。公契約は従来、財政実情を踏まえたうえに行政内部で決定された基準のもとで契約条文が定められてきた。しかし、近年の低価格競争入札の実態を問題視して、公共事業を請負う民間事業者の労働者の生活水準安定化に向けて、「公契約条例」を制定する動きが広がりつつある。野田市の事例では、市長が定めた一定以上の賃金水準を支払うことを請負業者に課しており、その賃金水準は最低賃金法に基づく「最低賃金額」よりもさらに高いものとなっており、また、「工事又は製造以外の請負の契約」に関しては主に野田市の一般職員並みの賃金水準を設定することとなっている。野田市以外の自治体でも同様の動きが広がっていく中で、公契約条例の賃金水準の考え方として、自治体一般職員並みの水準はひとつの大きな基礎的構成をなすものと見られる。
自治体職員の給与は各自治体の「人事委員会」による勧告を受けて議会で議決される。その重要な役割である人事委員会の勧告は「人事院勧告」同様、民間給与水準との比較や職員の生計費等を考慮してなされている。この生計費については、人事院と同様に「標準生計費」の考え方が取り入れられているが、「標準生計費」は1人世帯を基準に世帯人員ごとに換算率を乗じて推計値を算出している。ちなみに兵庫県の人事委員会が算出した「神戸市における費目別・世帯人員別標準生計費(平成24年4月)」によると、1人世帯103,720円、2人世帯148,390円、3人世帯172,470円、4人世帯196,540円となっている。ただし、あくまでも同生計費は参考とする指標であり、人事院勧告によるラスパイレス指数の変化や民間給与格差との是正が柱となり、兵庫県では、現在、大卒後すぐの22歳の給与平均は170,450円、35歳273,732円(職務の級4級)、45歳362,025円(職務の級5級)、55歳404,641円(職務の級6級)となっており、標準生計費を上回る給与支給額となっている。このような実態においては、公契約条例の賃金水準に関する基本的な考え方として自治体職員並みの給与水準を求めることは低賃金労働者にとっては大いに理にかなった考え方となるであろう。ただし、自治体職員も民間賃金格差是正が給与水準の大きな拠り所のひとつとなっていることでは、そもそもの民間賃金水準の適正さを検証する必要があり、その意味では必要生計費算出が公契約条例の考え方にも取り入れられる必要があると考える。