2.必要生計費と生活満足感との関係性

 必要生計費は勤労者世帯がすべからく充足したいと望むものであり、その充足は労働の意欲・能力を再生産しうるための根幹となるものである。
 ただし、本調査研究の一連の過程において、特定の年齢、家族構成、居住地域においては、その必要となる生計費が満たされず、生活満足感を損なっている状況が表れている。このことは、個人の生活に対する価値基準のみならず、先に触れたように、社会全体として問題が表面化した結果とも思われる。具体的には、丹波地域における生活満足感の相対的な低さは、情報網や流通の発達によって、日本全国あらゆる地域における生活水準意識の同質化が図られてきた。それにも関わらず、産業・雇用に関しては都市部への集中が依然としてあり、経済的な豊かさが地方部で享受できず、生活水準意識とのギャップが露呈した結果、生活満足感の低下につながっていると推測される。そのことは、より高度な資本が集まる都市部への人口集中を促し、さらには地方部の産業空洞化をより促進させる結果にもつながると懸念される。
 また、家族構成では高校生の子どもを持つ家庭において生活満足度が低い結果となったが、これは、必要生計費がちょうど高まりを迎える時期でもあり、世帯主年齢が40代~50代前半と仕事の上でも役割が大きくなる時期でもある。よって、この家族構成・年齢層では年収も高まりを迎えることになるが、それとは反対にライフスタイル調査や「家計調査」でも明らかなように「貯蓄率」が他の年齢に比べて低く、住宅ローンなどの負債を抱える年代でもある。このような年齢層が抱える悩みとして、将来の老後に向けての資産形成や子どもの就職などによる家庭からの自立がうまくいくのかどうかといったことがある。これに対し、現下の社会情勢は逆風を浴びせ続けていることから、将来生活への不安感をもたらし、年収は高まるが安心できる貯蓄ができない事で生活満足感を低下させているものと考えられる(ライフスタイル調査において、「将来生活への不安感」が高まるほど「生活満足感」が低下しているという相関関係は有意に強い結果となっている。r = △.327,p< 0.01)。
 このように、「必要生計費」の算出は単に生活に必要な費用といった視点にとどまらず、年齢や家族構成、地域別の消費性向や年収とのバランス等の状態からくる「生活満足感」といった個人の意識レベルに大きな影響を与える費用といえる。