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3 就業規則と周知義務
Q 就業規則を見せてほしいと頼んだら、「うちにはない」といわれた
A 規模10人以上の事業場には作成・届出周知義務がある
目次
法律のポイント
規模10人以上の事業場には作成・届出義務がある。制定・変更にあたっては労働者代表の意見聴取義務があり、その就業規則を従業員に周知しなければならない。(労基法第89条・第90条・第106条) |
解 説
規模10人以上の事業場に
就業規則の作成・届出義務があるのは「常時10人以上の労働者を使用する」事業場である。労働者数が時期によって変動する場合もあるが、「常態として」10人以上であるか否かで判断する。労働者数にはパートや契約労働者、アルバイト等雇用されるすべての者が含まれる。規模10人未満であっても作成・周知が望ましい。
記載内容
絶対的必要記載事項(必ず記載すべき事項)
(1) 始・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制の場合は就業時転換に関する事項
(2) 賃金(臨時の賃金を除く)の決定・計算方法、支払方法、締切日・支払時期、昇給に関する事項
(3) 退職に関する事項(「解雇の事由」を含む)
※ 労使当事者間において解雇の事前予測可能性を高めるため、2004年1月1日施行。この記載がない就業規則は、これを追加して改めての届け出が必要である。「解雇の事由」には懲戒解雇事由のほか、普通解雇事由についても具体的に列挙しなければならない。
相対的必要記載事項(定めがあれば必ず記載すべき事項)
(4) 退職手当に関する定めが適用される労働者の範囲、手当の決定、計算及び支払の方法ならびに支払時期に関する事項
(5) 臨時の賃金、最低賃金額に関する事項
(6) 労働者の食費、作業用品その他労働者負担に関する事項
(7) 安全・衛生に関する事項
(8) 職業訓練に関する事項
(9) 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
(10) 表彰及び制裁の種類、程度に関する事項
(11) 前項のほか当該事業場の全労働者に適用される定めをする場合においては、これに関する事項
任意的記載事項(記載が任意である事項)
上記以外で法令や労働協約、公序良俗に反しない事項
就業規則は、それぞれの事項について別規則とすることもできる。一般的には、退職金、資格制度、旅費規程など賃金と関連する事項を別に規定する例が多い。
法令等の周知義務
就業規則・労使協定・労使委員会の決議を労働者に周知しなければならない。(労基法第106条)
周知の対象項目
①就業規則
②貯蓄金管理(労基法第18条)
③購買代金などの賃金控除制度(労基法第24条)
④1カ月単位の変形労働時間制(労基法第32条の2)
⑤フレックスタイム制(労基法第32条の3)
⑥1年単位の変形労働時間制(労基法第32条の4)
⑦1週間単位の非定型的変形労働時間制(労基法第32条の5)
⑧一斉休憩の適用除外(労基法第34条)
⑨時間外・休日労働(労基法第36条)
⑩時間外労働分も見込んだ事業場外労働のみなし労働時間制(労基法第38条の2)
⑪専門業務型裁量労働制(労基法第38条の3)
⑫ 企画業務型裁量労働制にかかる委員会の決議(労基法第38条の4)
⑬時間単位の年次有給休暇の付与制度(労基法第39条)
⑭年次有給休暇の計画的付与制度(労基法第39条)
⑮ 年次有給休暇取得日の賃金を健康保険の標準報酬日額で支払う制度(労基法第39条)
周知の方法(いずれかの方法)
- 各従業員への書面の交付
- 常時各作業場の見やすい場所への掲示又は備え付け
- 磁気ディスク等に記録した内容を常時労働者が確認できる機器の各作業場への設置
就業規則の開示
使用者には労働者に対して就業規則を周知する義務があるが、使用者に周知を求めても、閲覧などさせないケースがある。
このような場合には、労働基準監督署を通じて開示を求めることができる。
開示・請求できるのは、届出のあった事業場に所属する労働者または退職した労働者(この事業場との間で権利義務関係に争いがある者)である。
(厚生労働省通達/平13. 4.10基発第354号「届出事業所に所属する労働者等からの就業規則の開示要請の取扱いについて」)
意見聴取義務
作成または変更に当たっては、労働者代表の意見聴取義務があり、労基署への届出に際して労働者代表の意見書の添付を要する。
(1) 意見聴取の相手方
:過半数労働組合(過半数労働組合がない場合は、過半数労働者代表者)である。なお労働者数にはパートも含まれる。
(2) 過半数労働者代表の選出方法
:民主的手続きを要する(労基則第6条の2)。
(3) 聴取の程度等
:協議による決定や同意を必要とするものではなく反対意見であっても意見を聴けば、届出は受理される。
就業規則による不利益変更
労働条件は労働者と使用者の合意により変更することが原則である。労働者と合意することなく、就業規則を変更することによって、労働者の不利益に労働条件を変更することはできない(労契法第8条、第9条)。
使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、以下のことが必要である(労契法第10条)。
①その変更が、以下の事情などに照らして、合理的であること。
・労働者の受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との交渉の状況その他の事情
②変更後の就業規則が労働者に周知されていること。
罰則
作成・届出義務違反は30万円以下の罰金
〈参照条文〉労基法第89条、第90条、第106条、第120条労契法第7条、第8条、第9条、第10条
お役立ち参考情報
【厚生労働省】 就業規則を作成しましょう(PDF:1,525KB)(H26/3)
【厚生労働省】 モデル就業規則(外部リンク)(H30/1)