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7 労災保険
Q 仕事で負傷したが、パートは労災扱いはしないといわれた
A 雇用形態の如何を問わず、労災保険の適用がある
法律のポイント
労災保険は、原則として全産業・全事業所が強制加入であり、身分や形態に関係なく、雇用される労働者全員が適用対象となる。(労災保険法第3条)
解説
強制加入
労災保険は、1人でも労働者を雇用する事業所は事業開始の時点から強制加入が原則となっている(例外:農水産業の事業のうち5人未満の個人経営の事業などは任意適用)。
労働者とは
労基法第9条には「労働者とは、職業の種類を問わず、事業場に使用される者で賃金を支払われる者をいう」と規定されている。したがって派遣労働者やパートはもちろん、学生アルバイトもここにいう労働者である。
安全衛生
労働安全衛生法(第66条、同規則第44条)で事業主は、1年以内ごとに1回、定期的に10項目の検査を医師による健康診断として実施しなければならない。
解雇制限原則
使用者は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業している期間とその後30日間は、労働者を解雇できない(労基法第19条1項)。この解雇制限は通勤災害には適用されない。
長期療養の場合
療養開始後3年を経過しても治らない場合において、労基法81条に基づいて打切補償(平均賃金の1,200日分)が支払われたときは、解雇制限は解除される(労基法第19条1項、第81条)。
なお、療養開始後3年経過した時点で傷病補償年金を受けている場合には3年経過の時点、療養開始後3年以上経過してから傷病補償年金を受けることとなった場合は年金を受けることとなった時点で、上記の打切補償が支払われたものとみなされ、解雇制限は解除される(労災保険法第19条)
請求手続
労災保険法に基づく保険給付等を請求できるのは、被災者本人または遺族である。実務上、事業主が手続きを行うことが少なくないが、これは、手続きを代行しているにすぎない。
給付内容と手続
業務災害、通勤災害により療養し、休業する場合に支給される給付の内容とその手続をまとめると、次の表のようになる。
区分 | 内容 | 手続 |
療養補償給付 療養給付 | 傷病の療養を行う場合に支給 1療養の給付 労災病院や労災指定病院などで無料で療養を受けられる現物給付 2療養の費用の給付 労災病院や労災指定病院等以外で受けた療養に要した費用の支給 |
1療養の給付請求書を療養を受ける労災病院・労災指定医療機関を経由して所轄の労働基準監督署長に提出 2療養の費用請求書を所轄の労働基準監督署長に提出(費用の額を証明する書類を添付) |
休業補償 給付 |
傷病の療養のため労働できず、賃金を受けられない日が4日以上に及ぶ場合、休業等4日目以降、原則として、休業1日について給付基礎日額の60%を支給 | 休業補償給付支給請求書を所轄の労働基準監督署長に提出 |
休業特別 支給金 |
休業(補償)給付を受ける者に対し、休業1日について給付基礎日額の20%を付加して支給 |
※労働者が就業中または事業場内等で死亡・負傷した場合は、労働者死傷病報告書を労働基準監督署長に提出する必要があります。
※休業3日目までは使用者が休業補償として平均賃金の60%を支払う義務がある(労基法第76条)
通勤災害と業務災害の差異
労災保険法上、通勤災害と業務災害は別個のものとされており、保険給付についても内容はほぼ同じであるが名称が異なっている。両者の主な相違点は次のとおりである。
項目 | 通勤災害 | 業務災害 |
受療に際しての一部負担金 | 有り | なし |
待機期間中の休業補償義務 | なし | 有り |
休業中及びその後30日間の解雇制限 (労基法第19条)の適用(最長3年) |
なし | 有り |
年休の要件たる出勤率の算定に当たっての休業期間の取扱い | 出勤とみなす | |
必要なし | 必要有り |